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2021年1月21日 (木)

山本周五郎「日本婦道記」

11112_20210121211301  山本周五郎は、それ以前の落語とか人情話として扱われていた江戸町人の話を時代小説という小説にしたという、ジャンルを創設したというだけで凄い作家ではあるのだけれど、この「日本婦道記」は、そういうことを抜きにしても、すごいとしか言いようがない。これは短編の連作小説集なのだけれど、ひとつひとつの短編は解説なんかにもあるように武士の峻烈な生き方を描いて感動を誘うようなよくできた小説だ。しかし、一冊を通して読むと、それぞれの短編が、実は同じパターンの繰り返し、つまりワン・パターンであることに気が付く。若い女性が嫁入りした先で、不可解な事件に遭い、不遇となるが、それに耐えて、最後は、実はは発端の不遇な事件の謎解きがあって(夫は藩の密命でとか、友人をかばってとか、えん罪がはれてとか)ハッピーエンドというパターン。しかし、この小説集を続けて読んでいても、ワン・パターンと思わない、同じような話と思わない。それがすごい。おそらく、山本周五郎は意識して書いている。そんな実験的なことを試みた小説家を、私は彼以外に知らない。もともと山本周五郎という作家は、ストーリーをつくる人だという定評だが、この小説集ではストーリーはワン・パターンであるにもかかわらず、ストーリーテリングだけで読ませてしまう。そういう凄みを感じさせる、おそろしい小説集だと思う。

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