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2021年8月 4日 (水)

ジョージ・マカロフ、ロバート・シラー「アニマル・スピリット 人間の心理がマクロ経済を動かす」

11112_20210804214801  実験室での行動経済学に対して、「経済学の想定する『合理的な人間』というのには無理があるのではないか?」と疑問を提起し、かなり大雑把に人間の「非合理」な部分を取り出し、それを経済現象を説明する道具に仕様とすることを提案しているのがこの本。
 「アニマルスピリット」とは、ケインズが『雇用・利子および貨幣の一般理論』で使った言葉で、資本家の「チャレンジ精神」や「冒険心」といったものを表す言葉だが、著者たちは人間の合理的でない行動一般を表す言葉として用いた。二人はアニマルスピリットとして指摘するのが、経済に大きく影響する「安心」、「公平さ」、「腐敗と背信」、「貨幣錯覚」、「物語」の5つの要因。 例えば、「安心」の有無は人びとの経済行動を大きく左右し、人びとは「公平さ」を求めてしばしば自己の利益を失う。また、朝三暮四ではないけれど、貨幣の実質的価値が重要だと頭ではわかっていたとしても、多くの人々は貨幣の額面にこだわる(「貨幣錯覚」)。
 ただし、マクロ経済学の数量分析を否定しているわけではなく、それでは経済現象を十分に説明しきれないということ。例えば、マクロ経済学に基づく財政政策が実施されていても、リーマンショックのような金融恐慌は起こってしまう。もし、人々が経済合理性に基づいて行動すればFRBと財務省の行動はリーマンショックを防げたという。それができなかったのは、例えば人々が「安心」を求めて、行動をエスカレートさせてしまった(具体的な物を買うには限度があるが、安心には限度がないから)からという。
 では十分な分析をするためにアニマル・スピリットの影響度がどのくらいで、どのように分析したらいいかという理論構築はできていないで、問題提起に留まっているといえる。2009年に出版された著作なのでしかたないとも言えるが、この著作で批判されている経済合理性ということは、実は一通りではないのではないかと思う。例えば、ミクロ経済では合理的な行動が、マクロ経済では不合理になってしまうマクロの誤謬という現象は、ここで考慮されてもいいのではないかと思う。おそらく、今の日本のデフレ状態の分析には、そういう視点が意味を持ってくるのではないかと思ったりする。この本を読んでいて、そういうことを考えさせられた。

 

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