ウルトラヴォックス「システムズ・オブ・ロマンス」
ジョン・フォックス在籍時のウルトラヴォックスが1978年にリリースした第3作目。当時は、シンセサイザーというアナログで音を作るのにホワイトノイズから周波数を調整する手作業の楽器が未だ残っていた頃だ。タンジェリン・ドリームなどの一部のプログレバンドやヴァンゲリスのようなプレイヤーが、それを特権的に使いこなして壮大な音宇宙を創り出していた。その一方で、デジタル化が始まるに伴いクラフトワークや日本のYMOがミニマル・ミュージックをポップスに置き換えたようなテクノ・ポックが生まれた。ウルトラヴォクスは、そのテクノの音宇宙をパンク・ニューウェイブのスピード感あるロックン・ロールに乗せて、ポップでありながらミステリアスで、しかもパンクのアグレッシブなティストを併せ持った斬新な音楽を創り上げた。一曲目の「スロー・モーション」の微かに始まり、次第にうねるように徐々に音量を上げてくるシンセの持続音に、重低音のベースが乗ってきて、ドラムスが聞き手を驚かすように闖入してくる幕開けは、新時代の開始を告げるファンファーレのようだった。
この後、ジョン・フォックスはバンドを脱退し、引き継いだミッジ・ユーロの主導でリリースされた「ヴィエナ」がヒットし、バンドは人気を得ていったが、同じパターンの繰り返しになって、新たな世界が開けていくようなワクワクした雰囲気を失っていった。
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