野矢茂樹「言語哲学がはじまる」
「どうして言葉は無限に新たな意味を無限に作り出せるのか」という問いを考えるプロセスで、様々な問いが生まれ、それについて様々な例を出しながら考え、そこからさらに問いが生まれ、その繰り返しを重ねる。そのプロセスにおいて、フレーゲ、バートランド・ラッセル、ウィトゲンシュタインという言語哲学の系譜を明らかにしていく。対象や事実があって、それを表わすのが言葉であるという常識に異を唱え、言葉の意味は文脈から成り立つと考えたフレーゲ。それを批判して言葉とは対象を指し示すものと考えたラッセル、それを批判して対象というのは人が言葉という枠組で現れると考えたウィトゲンシュタインという思想のドラマは劇的でもある。
しかし、何よりも本書の魅力は著者はさまざまな疑問を受け止めつつ、さまざまな例を出しながら少しずつ謎を解き明かしていく過程にある。 だから、フレーゲ〜前期ウィトゲンシュタインの議論を一通り知っているという人も面白く読めると思う。
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