稲葉振一郎「不平等との戦い─ルソーからピケティまで」
8年前に読んだ本の再読。この本は、当時、大きな話題となりベストセラーになったピケティの『21世紀の資本』が大部の専門書なので、なかなか取っ付きにくいため沢山の解説本が、いわば便乗本のように出版されたが、本書もそのひとつ。ただし、この本は『21世紀の資本』の『21世紀の資本』の内容解説というより、『21世紀の資本』の書かれた背景、あるいは前提がどのように考えられてきたかを考えたもので、『21世紀の資本』と切り離して、この本単独で読む価値があると思う。経済成長を進めれば、格差が生じるのは避けられない。しかし、不平等はよくない。この両者のジレンマのなかで、人々はどのように考えてきたかを追いかけたというのが、この本の内容。それを、きいただけでも興味がわいてくる。
『21世紀の資本』において注目すべきポイントは自由な市場経済が浸透し、持続的な技術革新・経済成長が常態となっている先進諸国において経済的不平等が拡大していることに注目したが、同じように先進国内の格差に注目した経済学者の多くが資本所得より労働所得、物的投資より人的投資に注目したのに対して、ピケティは物的資本に注目したところにあるという。それは新古典派経済学的発想から、古典派・マルクス経済学への回帰とも言えることだった。
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