生誕150年 池上秀畝―高精細画人―
年度内に一定数以上の有給休暇を消化するようにと会社から言われ、最低数の休暇取得のため、慌ただしくも休暇をとることになった。とくに予定もなく、朝寝坊をし、天気は雨だし、一日寝て過ごそうと思ったが、折角の機会だからと、インターネットで開催中の展覧会を調べて、面白そうなものを見に行くことにした。
結構雨も強いし、展覧会の会期初めでもあるし、会場は比較的すいていた。といっても閑散としているわけでもなく、会場に他人がいることで緊張感があるという、私にはちょうど良いくらいの状態。
私は、池上秀畝という画家については何も知らないので、主催者の挨拶を紹介がてら引用します。“池上秀畝(1874~1944)は、長野県上伊那郡高遠町(現在の伊那市)に生まれ、明治22年(1889)、本格的に絵を学ぶため上京。当時まだ無名だった荒木寛畝の最初の門人・内弟子となります。大正5年(1916)から3年連続で文展特選を受賞。また、帝展で無鑑査、審査員を務めるなど官展内の旧派を代表する画家として活躍しました。同じく長野県出身で同い年の菱田春草(1874~1911)らが牽引した「新派」の日本画に比べ、秀畝らの「旧派」と呼ばれる作品は近年展覧会等で取り上げられることは少なく、その知名度は限られたものに過ぎませんでした。しかし、伝統に基づく旧派の画家たちは、会場芸術として当時の展覧会で評価されたことのみならず、屏風や建具に描かれた作品は屋敷や御殿を飾る装飾芸術として認められていました。特に秀畝は徹底した写生に基づく描写に、新派の画家たちが取り組んだ空気感の表現なども取り入れ、伝統に固執しない日本画表現を見せています。本展は生誕150年にあたり、秀畝の人生と代表作をたどり、画歴の検証を行うと共に、あらたなる視点で「旧派」と呼ばれた画家にスポットを当てる展覧会です。”
展示作品は5章に章立てされ、展示リストには番号が振られていますが、会場の展示は、必ずしも、その順番に従っているわけではなく、スペースの都合なのか、モチーフやテーマの関連で並べられたのか分かりませんが、その展示の意図を考えだけでも面白く、いつも展示リスト片手に展示を追いかける私としては、一つの作品を見て、次の作品に移ると、「こんなこともやっているんだ!」と驚くことも少なくないという、手に汗握るといったに大袈裟ですが、面白い展示でした。それに加えて、展示作品に付加されている作品説明にタイトルづけがしてあって、例えば「爽やかなペパーミントグリーンの風」とか「七面鳥ってなんかキモカワ」といったキャッチーなものがあったりして、普段は見ないことが多い説明文を、今回は、作品とともに追いかけていました。これらのことから、美術館の人々の力が入っている思い入れが分かるようで、そういうのを感じさせられることもあって、充実感の高い楽しい展示だったと思います。個々の作品の感想は、章立てを尊重しつつ、展示されたものを見た順に書いて行こうと思います。
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