北欧の神秘―ノルウェー・スウェーデン・フィンランドの絵画(4)~第2章 魔力の宿る森─北欧美術における英雄と妖精
北欧の芸術家たちは、国際的な芸術的動向に目を向けると同時に、母国の文化的伝統に強い関心を抱き、土地に伝わる民話や伝承から着想を得た。序章も第1章も同じですね。やっぱり区別がつきません。あまり、こだわらない方がいいようです。北欧神話や民間伝承の世界を描いた作品が中心ということです。
アウグスト・マルムストゥルムの「フリチョフの誘惑」という作品です。この人の作品は序章のところで「踊る妖精たち」を見ました。あの半透明の妖精たちが流れてくる作品です。この作品では、前の白い半透明のファンタジーが黒一色の濃淡だけに限られた空間で、目を凝らして見ないと何が描かれているか判然としないような、それゆえに現実か幻想かはっきりしないような光景ができています。これは『フリチョフ物語』の一場面で、深い森の木立の中でフリティオフとのリング王が座って休んでいて、王は眠りに落ち、フリティオフは王の命を奪うべきか否か、激しい誘惑に駆られている場面ということです。鬱蒼と茂って、あたりを暗くしている針葉樹とその枝が何かを語っているようにも見えます。ドイツ・ロマン派は黒い森のおどろおどろしたのとは違った北欧の森は暗いく危険だけど、ひんやりとした雰囲気で透明感がある。
エーリク・ヴァーレンショルの「森の中の逃避」という作品です。これも暗い森の場面です。『オーラヴ・トリュッグヴァソン王のサガ』の一場面を描いたものです。オーラヴ・トリュッグヴァソンの母親が邪悪な女王グンヒルドから逃れるために、生まれたばかりの子供を連れて暗い森の中を逃げる場面ということです。人物の足元でたき火をしているのか、背中を向けている人物がカンテラを持っているのか分かりませんが、その灯りによって3人の人物とその周囲がぼんやりと浮かび上がる。これも幻想的に見えます。この第2章の展示コーナーのタイトルが「魔力の宿る森」であるそのもののように、ここで描かれている森は「異界」であり、人ではない超自然的な存在が支配する領域というような、おどろおどろしさが感じられます。夜の暗さの中で、灯火によりほんやりと照らされ、針葉樹の一部だったり、川の水面に反射してみえるのが雰囲気をさらに強調します。この画面の中心は逃避する人物たちより、周囲の森のおどろおどろしさのようにも思えてきます。
ここから、階段を下りて、フロアが変わります。
J.A.G.アッケの「金属の街の夏至祭」という作品。フロアが変わって、第3章の展示となるので間違えそうですが、リストを見ると第2章になっています。ただ、都市を描いてもいるので、どちらにも当てはまるとも言えます。ただし、この都市は現実なのか幻想なのか曖昧です。スウェーデンの伝統行事である夏至祭の様子が、ビルのような建築物と並列して描かれ、その彩色と画面前方の水に映った虚像によって儚く強調される。その風景が淡い色彩で、モネの「印象の日の出」のようにぼんやりと描かれる。しかし、夏至祭に参加している人々ははっきり描かれるが赤く彩色され、現実感がない。裸のようにも薄いローブをまとっているようにも、音楽を奏でたり、踊っているようなポーズをとっているように見えますが、動きが感じられず止まっているかのようです。人というより人形のように見えます。全体が蜃気楼のような、儚い夢のようなのです。
この他は絵本の挿絵のような作品が並んで熱心に撮影する人が多かったようですが、スルーでした。最初の序章のところが一番面白くて、だんだんと尻すぼみの印象です。
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