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2024年7月26日 (金)

川北稔「砂糖の世界史」(6)~第7章 イギリス風の朝食と「お茶の休み」─労働者のお茶

 イギリス人の食事においては、砂糖は食品として大きな意味を持っている。今では、平均してカロリーの15%から20%を砂糖から摂っている。例えば、食事の最後に砂糖をたっぷり使ったスウィーツというお菓子を食べるのが普通だし、紅茶に砂糖をたっぷり入れて飲む人が多い。砂糖は、有力なカロリー源として、「イギリス風朝食」の基本となり、産業革命時代のイギリス人の生活の基礎となった。イギリス人は、中世以来1日2食で、朝食は食べなかった。1日3食となったのは17世紀中ごろと言われている。
 産業革命により、イギリス人の多くが都市に住むようになる。それまでの、農村の生活は共有地の山林などで自由にたきぎをとり、家畜を飼うことができた。この人々が都市住民となる。都市の労働者の住宅は、狭くて汚く、調理のできる台所もなかった。農村のように燃料を無料で調達できない。お金がなければ、暖房も煮炊きもできない。また、工場労働は時間を厳格に守る規則正しい生活リズムを強要される。そんななかで、自宅でパンを焼いたりスープを調理するといった朝食の準備はできなくなる。そこで、準備が簡単で腹持ちがいい朝食がもとめられた。それに応えたのが「イギリス風朝食」だった。砂糖いう入り紅茶は、カフェインが目が覚めるし、カロリーを補給できた。街のパン屋で買った冷たいパンに、温かい紅茶により温かい食事に変えることができた。
 一方、砂糖入りの紅茶は、地球の両端から持ち込まれた二つの食品を合わせたもので、世界商業の中心であるイギリスだから可能になったものだ。イギリス国内の農業で生産される穀物より、奴隷のつくる砂糖の方が安上がりになった。世界は一つになり、イギリスがその中心になり、都市労働者をはじめとして、農民の生活も、世界貿易なしには成り立たなくなっていた。
 砂糖いう入り紅茶は、19世紀には、ジェントルマン階級のステイタス・シンボルの意味と、工場労働者に代表される民衆の生活のシンボルとしての意味も持つようになっていた。

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