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2013年12月13日 (金)

ターナー展(7)~Ⅹ.晩年の作品│THE FINAL YEARS

いよいよ、晩年のモヤモヤの作品です。これまで見てきた作品は、ここでの作品と比べてみれば、たしかによく描かれた風景画とは言えます。でも、いうならば、その程度、別にターナーでなくても、その力量を持った画家なら描くことは出来たかもしれません。私の独断と偏見でいえが、これまで見てきた風景画は、英国でも、日本でも、どこでもいいですが、アカデミーとかの画壇の権威に昇りつめて、高い評価を得ていた画家で、死後十年もすれば忘れ去られて歴史から消えてしまう画家の作品の域を出ないものだったと思います。絵画鑑賞の消費者の、独断と偏見に満ちた勝手な言いぐさですが、この晩年のもやもやとした作品はターナーでなければ描けないオリジナリティの塊のような作品で、彼の他に、こんな作品を描こうともしなかった、他に類似をみないものだと思います。ターナー自身は、これを未完成として、展示された会場で直前に仕上げる用意をしていて、展示の機会がなく、仕上げの描き足しができなかったので、未完のまま残されてしまった、という説もあるそうで、それは、確かにそうだと思えるものではあります。しかし、絵画鑑賞の消費者である、私のような人間は、それを作品としてみて、面白がっていけないわけはないので、これらはそういうものとして、楽しむというのが私の姿勢です。

Taketurna「平和─水葬」という作品。海景画の体裁をとっています。燃え上がる船のシルエットは、とくに帆柱や帆のところ等はきっちり形がとられていますが、左奥の白く描かれたのは船なのかどうか、また、中央の船が燃えて黒い煙が立ち上っているためか、また、船の影が伸びてきているためか、煙が流されたのか黒い不定形の形が左手前の海面のところにあったり、とよく分らない形があちこちにあります。また、背景の空の雲混じりのどんよりとした風景など、細部をよく見ると、不思議なものが、後から後から見つかるという作品です。タイトルのとおり、イギリスの高名な画家の遺体を水上で焼いて葬っているところを描いたとのことで、単なる海上の風景ではなくて、故人をおくる冥界の渡し船に擬しているとも解説されています。そうなのでしょうが。私には、シンボリックな意味づけよりも、前にも書きましたが、そこにターナー自身なのか、作品を見る人なのか分かりませんが、そこにある種の気分とか雰囲気、具体的で視覚的な発想ではなくて、言葉で、例えば小説なら“沈んだ気持ち”と一言で言えてしまうものが絵画では直接描くことができない。そのようなものを、ロマン主義の影響下にあったターナーは描く志向を持っていたのではないか。黒い煙と影のなかで、炎の色の鮮やかさや画面に散りばめられた不定形になにものか、あるいは全体の色調が何らかの言葉で表された気分というものを何とか画面で表わそうとした。しかし、具体的な見える形にしてしまうと、具体的なものを想像してしまって、気分を感じるには至らない。そうやって試行していったものの一つが、この作品ではないか。

そして、そのような試みを様々に繰り返しながら、出来て画面をみていると、今度は視覚的な面白さを発見した。そこで記号の逆転が起こった、とは考えられないでしょうか。悲しさを表わす涙が、いつか逆転して、涙を見せることが悲しんでいることを表現することになり、さらに嘘泣きというものに発展していく。そのプロセスで悲しいという感情はなくてもよくなっていく。ターナーのもやもやは悲しいという中心を虚った涙のようなものとは言えないでしょうか。つまりは、視覚的効果の塊です。

Tunerlui「フランス国王ルイ=フィリップのポーツマス到着、1844年10月8日」という作品は、明らかに未完成なのでしょう。ここに描かれている、ポーツマスで到着を歓迎する人々の影の薄さというのは、背景の空や海と同じような不定形の一部のようです。ターナーの色遣いの特徴の一つである黄色がとても目立っています。この色彩のグラデーションは画面の中で微妙な変化があって、見飽きないものになっています。

そして、展示の最後にあったのが「湖に沈む夕陽」という作品。タイトルをみれば、そんな感じとも思えるかもしれませんが、形らしきものは何もありません。赤系統の色と黄系統の色によるグラデーションと見ることができると思います。これは、例えば、マーク・ロスコの描く雲のような形態がモノトーンでグラデーションを施してあるのを連想させます。ターナーの方は2色使っているので、より派手で明るい感じがします。ロスコの作品が画面に吸い込まれて様な、静けさを湛えているのにたいして、ターナーの作品は動きがあって輝いているように見えます。もっと開かれた感じで、アピールするものが強い感じです。

Turnersunset